研究肌リーダー鈴木課長のチームビルド成功への道のり No.4

このお話は大手医薬品メーカーの研究開発チームを率いる鈴木課長のお話です。

鈴木課長は外部企業でキャリアを積んだ転職組として期待のマネージャーでした。しかし蓋を開けてみると根っからの研究者肌の鈴木課長は人との関わり合いに大きなコンプレックスもあり、なかなか上手くマネジメントとしての役割を担うことが出来ないというお悩みを抱えておられました。更に、ご自身は会社から与えられたマネージャー職よりも3度の飯より研究が好きな方で、マネジメント職への喜びや楽しみを見出すことが出来ないまま、チームを率いておられるという非常に辛い日常を送っておられました。

そんな鈴木課長と私の出会いは、私が鈴木課長の会社でコーチングコミュニケーションの年間シリーズ研修として登壇しているセミナーの初日でした。

私は2週に一度そちらの会社にお邪魔し、1回3時間程度のコーチングを生かしたチームビルドの講義を年間24回というスケジュールで行っておりました。

鈴木課長は初回の講義の後、全員が帰られ誰もいなくなったセミナールームにこっそりお戻りになり、ご自身のお悩みをお話いただいたのが初めての出会いです。

その時はマネジメント職への不満やチームメンバーとの軋轢に悩んでいらっしゃるということを、小一時間お話していただきましたが、最後には、ぜひメンバーの話をしっかりと聴いてみたいと元気に帰って行かれました。

私はこの同様の講義を月に2回AクラスとBクラスという形で行っております。

その2週間後のBクラスに部下の佐藤さんが出席されておられ、佐藤さんからもチームの現状の課題点、そして客観的視点から鈴木課長のお話や課長に対するお悩みなどをお話いただいたのですが、これにより初めて両者の意見の食い違いが浮き彫りになりました。

それぞれの立場での意見に耳を傾けることにより見えてくる課題点をどのように生かしながら裏から鈴木課長のチームを良い報告に調整していくか?

これはコーチである私にとっても一つの挑戦になるのではないかと感じました。

佐藤さんのお話の内容は、以下のブログに記載されております。

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詳しくは7月3日 ブログをお読みくださいませ
研究肌リーダー鈴木課長のチームビルド成功への道のり No.2

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そして、更に、このお話に伴い、普段行っている【傾聴】のコツについては、こちら

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詳しくは7月4日 ブログをお読みくださいませ

研究肌リーダー鈴木課長のチームビルド成功への道のり No.3

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さて、今日は1か月振りに鈴木課長が参加されるAクラスです。私は講義をしながら あれからどうなったのかなぁとちょっとだけ講義後の鈴木課長とのお話を楽しみに講義を行っておりました。

Aクラスは40代50代が多く、マネジメント職をされておられる方も多くいらっしゃることから、ワイワイというよりは粛々と同じような課題を持ち、その解決方法をシェアしあいながら学びを深めておられるといった感じです。

2回目に顔を合わせる方々ばかりでしたので講義後の質問も少しづつ増えてきているように思います。

粗方 質問対応も終わりセミナールームを見渡すと、後ろの席にポツンと鈴木課長がノートを目の前に広げて眺めておりました。その姿は、復習をしているというよりは復習をする振りをしていると申しますか、やはりお話したいことがおありなようです。

私は静かに近寄り声をかけました

「鈴木課長 今日の講義はいかがでしたか?何かご質問はありましたか?」
すると、鈴木課長は、小さく「えぇ」とだけお話されて方を丸めて黙ってしまいました。

「どうされましたか???」

「あっはい。今日もとても勉強になりました。ありがとうございます。そして先月は長い間お話をお伺いいただきありがとうございます」

「いえいえ。とんでもないです。その後いかがですか?」

「はい。実は・・・。」

中肉中背で40代半ばの割にはすらりと背の高い鈴木課長が、小さく下を向き どうも言いづらいというような表情をされてなんだか、いつもと違う雰囲気でした。

少しの間 沈黙が流れ、あえて口を挟むことは避け鈴木課長が口火をきることを待ちました。

するとしばらくして、顔を上げ心なしか肩を落とした状態でこう発言されました。

「寺田さん・・・。私はやはりチームメンバーに尊敬されていないようです。」

自分の口からそうは言いたくなかったのでしょう。少し苦笑いを浮かべながら視線を下げて、そうお話されました。

「そうお感じになったんですね・・・。何故そう思われたのでしょうか?」

そう質問すると
「うーん。前回の最後に寺田さんこう伝えたことを覚えていますか?チームメンバー1人1人と話をしてみますと。」
「はい。もちろん覚えています」

「せっかく前向きになったのだから、やってみようと思い、全員と話す時間を確保して会議室に呼び出し、一人一人と話をしました」
「はい。それは勇気のいる事だったと思います。お疲れ様です。それからどうなりましたか?」

「えぇ。一様に全員が私のする質問に対して特にありませんとか・・・。考えていません・・・と口にするんです」
「なるほど・・・」

「そして、挙句の果てには もう仕事に戻っていいですか?!とか言うんですよ。なんというか悲しい気持ちになりました。仕事に対するビジョンとかないんでしょうか?なんだかもうただただ悲しいというか、メンバーにがっかりしました!それと自分にもがっかりしました」

そう吐き捨てるように話、ふぅっ!!と大きなため息をつきました。

「それから?」

私はあえて話を区切ることなく続けてもらいました。

「それから???それから・・・・・・。
それからみんなが、私が近寄ると少し警戒しているように感じます。唯一佐藤・・・。あっ佐藤という一番長い付き合いの部下がいるのですが、佐藤だけランチに誘ってくれたりして、一緒にチームの今後についてとか、私の部下との距離についてなど話しました。
なんだか、佐藤の優しさに嬉しいやら、情けないやら・・・複雑な気持ちになりました。」

心なしか目頭を赤くしながら話していただけたことにも感謝でした。

「そうでしたか。それは心の折れそうな状況をよく頑張りましたね」

私は咳を切るように流れ出た感情の流れを止めることなく、かつ流れが穏やかになるよう一旦お話を区切りました。
そして改めて、

「鈴木課長 今日の講義はいかがでしたか?」

そう尋ねました。今日は、正に「部下との真の信頼関係を気付く」という講義でしたので、まさに今の鈴木課長にピッタリのテーマだったと思います。

「すいません・・・。実は・・・この1か月のことを寺田さんに文句じゃないけど・・・。話そうと思っていて、あまり講義の内容が入ってきませんでした」

申し訳なさそうにそういう鈴木課長に、この講義はとても大切な部分だったので少々残念に思いながらも・・・。気を取り直しお話しました

「それでは私が考える部下の方々と、いや人間関係においてもっとも必要なことをお伝えしても良いですか?」

そう、お話すると、鈴木課長は突然メモの準備を始め
「ぜひお願いします!」

と身を起こしました。

「分かりました。これはあくまで私の考えですので全ての人にこうしなさいということではないですので、そういう気持ちで聞いてください。

私は、人間関係にもっとも必要なことは尊敬だと思います。」

すると、改めて肩を落とし鈴木課長はこう言いました。
「やはり尊敬ですか・・・。部下に尊敬されていないですよね。私は・・・。」

私は、そうではないことをしっかりと伝えないといけないと考え、直ぐにこう話しました。
「いえいえ。そうではなく、双方の尊敬です。」

鈴木課長は目をきょとんとしながら
「双方の尊敬ですか?」
と繰り返しました。

「えぇ。双方の尊敬です。
ところで、鈴木課長は部下の方をどのぐらい尊敬しておられますか?」

そうお尋ねすると、鈴木課長は寝耳に水とでも言わんばかりに
「僕が部下を尊敬ですか?」
と素っ頓狂な声を上げられました。

私はいたって冷静に目を真っすぐ見て
「はいそうです」
と伝えたところ、しぶしぶともとれる面持ちで、続けられました。

「正直・・・。考えた事なかったです。仕事の質も速さも私が一番ですし、部下の何を尊敬したら良いのかなんて考えたことなかったです」

今日は、私の話す機会が多いようです。一言
「今日は私の話す割合が多いですが、続けても良いですか?」
と伺ったところ、鈴木課長は一つ返事で快諾してくださいました。

そこで私は、ゆっくりと話を始めました。
「私がお伝えしたい【尊敬】とは、何かが出来るから ということではないんです。
ナチスの迫害を受けてアメリカに渡った社会心理学者のエーリッヒ・フロムは【尊敬】という言葉を次のように定義しています。」

【尊敬とは人間の姿をありのままに見て、その人が唯一無二の存在であることを知る能力であり、尊敬とはその人がその人らしく成長発展していけるよう、気遣うことである】

「そう書いてありました。このお話を受けて、鈴木課長はどう思われますか?」

頭をポリポリと掻きながら、ばつが悪そうに
「寺田さん。それは・・・とても難しいですね。それが出来たら良いとは思うのですが、なかなか自分には難しそうです。」

私も、鈴木課長と気持ちのチャンネルを合わせながら、こう伝えました
「そうですね。永遠の命題かもしれませんね。私も鈴木課長と同じで、いつも難しいなぁと思いながらも日々そこに向かっているという感じです。」

私は、話を続けました
「もしも鈴木課長がどんなに優れたマネージャーであったとしても、チームメンバーが変化する保証はどこにもないんです。
それでも一切の条件を付けることなく、尊敬の念を持ち続けることが重要なんです。それは理想のチーム像を見つけた鈴木課長以外に、最初の一歩を踏み出すことは出来ないからです」

鈴木課長は口を少し強めに結び、真っすぐと私の目を見て両手をパンと両肘に叩いて気持ちを切り替えるように、こう言いました。
「分かりました。そうですね!!やってみます!」

私も「はい!」と返事をし、腕時計を見ると19時を回っており、当たりはすっかり暗くなっていました。

そこでこのようなお約束をしました。

「もう時間も遅いですし、今日のお話はここまでにいたしましょう。私は次回Bクラス開催の為に二週間後に参ります。その日のお昼ご飯の後の時間、1時間早く参りますので、もしよろしかったら、この話の続きをしませんか?それまでに、具体的に尊敬するとはどうしたら良いのか?ということをお考えになってみてください。」

そして一つ付け加えました
「最後に一つ付け加えておきます。これからも今までも起こり得た出来事の全ては自分に真因がある。これを忘れないでください。これは鈴木課長が幸せに生きるためには絶対に必要な心構えです。鈴木課長なら、それが出来ます。」

すると鈴木課長はペロっと舌を出し
「分かりました?寺田さんのせいにしようとしたこと(笑)」
と子供のように微笑みました。

私も、それに対して鈴木さんのいたずらっ子の真似をしてアイコンタクトだけで返事を返しました。

きっと上手くいかない現状を誰かの責任にしたいと思う気持ちは誰にでもあります。
しかし、全ての出来事は自分に真因があると強く自分を持つことが全ての起点になるのではないでしょうか?

今日のお話はここまでに致しましょう。2週間後 鈴木課長の思考にどのような変化が生まれているか?それは次のお話のお楽しみに

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