研究肌リーダー鈴木課長のチームビルド成功への道のり No.9

このお話は大手医薬品メーカーの研究開発チームを率いる鈴木課長のお話です。

鈴木課長は外部企業でキャリアを積んだ転職組として期待のマネージャーでした。しかし蓋を開けてみると根っからの研究者肌の鈴木課長は人との関わり合いに大きなコンプレックスもあり、なかなか上手くマネジメントとしての役割を担うことが出来ないというお悩みを抱えておられました。

更に、ご自身は会社から与えられたマネージャー職よりも3度の飯より研究が好きという方で、マネジメント職への喜びや楽しみを見出すことが出来ないまま、チームを率いておられるという非常に辛い日常を送っておられました。

そんな鈴木課長と私の出会いは、私が鈴木課長の会社でコーチングコミュニケーションの年間シリーズ研修で登壇させていただいた、セミナーの初日でした。

私は2週に一度そちらの会社にお邪魔し、1回3時間程度のコーチングを生かしたチームビルドの講義を年間24回というスケジュールで行っておりました。

鈴木課長は初回の講義の後、全員が帰られ誰もいなくなったセミナールームにこっそりお戻りになり、ご自身のお悩みをお話いただいたのが初めての出会いです。

その時はマネジメント職への不満やチームメンバーとの軋轢に悩んでいらっしゃるということを、いろいろお話され最後には、ぜひメンバーの話をしっかりと聴いてみたいと元気に帰って行かれました。

それ以来、セミナー後のお時間に全員がいなくなった頃にお戻りになり、小一時間お話することが暗黙の了解となりつつあります。

今日はAクラスの日です。

今日のテーマは「step by step型・ゴール逆算型」というお話です。

Aクラスは粛々と真面目に講義を聞かれる管理職の方が多いクラスです。年齢層としては40代から50代前半ぐらいが多いでしょうか?皆さん私のお話に強い関心を持ち一言も逃すまいとメモを取られる方が多いように思います。それだけマネジメント層の方々はチームで成果を上げるために、メンバーの良さを引き出すことに苦慮されておられるのだということが良く伝わってまいります。そこで、今日はこのようなお話からスタート致しました。


今日のテーマは「step by step型とゴール逆算型」というお話です。どなたか耳にしたことがおありの方はおられますか?

私はこんなお話からスタートしました。すると皆さん一様に軽く顔を横に振り、始めて聞いたという顔をされました。

それもそのはずです。これは私が長年コーチをする中で様々な心理学に関する本を読みながらオリジナルでまとめた考え方です。
従って、同じコーチの方でも似たような違う考えをお持ちの方もおられると思いますが、多くの人と関わる中で私がたどり着いた結論です。

私は話を続けました

「これは、キャリアの描き方や日々の気持ちの良い行動の仕方について、2つの思考の癖がありますというお話です。

ところで皆さんの中で

目標を立てて行動しろと言われ、ちょっと面倒くさいなぁと思ったり、むしろそう言われるとやる気がなくなるんだよ!

そんな風に感じたことがある方はいらっしゃいませんか?」

するとちょっとばつが悪そうにうつむきがちで、小さくうなずく方や、お隣の方に「お前だろぉ」とおどけて冗談を言い合ったりする方が見受けられました。

そうやって、表情を見ながら私は皆さん一人一人と会話をしている気持ちになります。

そして私は話を続けました。

「ゴールを設定し目標を立てて行動しなければ、良くない!とお考えの方って、この中でどれ位いらっしゃいますか?ちょっと手を挙げてもらってもよろしいでしょうか?」

するとほぼ9割以上の方が小さく手を挙げられました。

「それでは、実際にゴールの設定や目標を立てて行動するのが得意だ!という方はどのぐらいおられますか?」

すると、今回は3割強ぐらいの方々が小さく手を挙げられました。

私はそれを確認するとこのように続けました。

「実は、ゴールや目標をたてずとも成功されておられる方って結構いらっしゃるんですよ」

そういうと、一様にざわざわっとした空気が流れ、一人の方が手を挙げられました。営業部の若手課長 田中さんです。

「寺田さん、それはその人に才能があったからではないでしょうか?」

私はそれを受けて、このようにお伝えしました。
「田中さん 良い意見ですねぇ。それは確かにそうかもしれませんね。

それでは、私の考えをお伝えしても良いですか?」

すると田中さんは小さく頷きました。

「私は、目標を立てなくても、成功されておられる方は、日々自分の好きなことを貫く才能がある方と思っています。」

すると、田中さんは少し?という顔をしながあら小さく斜めにうなずきました。

「このお話は今日の最後に取っておくとして、順を追って、お話していきますね。

今日のテーマは日々目の前のことを一歩一歩こなしていかれる思考の仕方と、ゴールや目標から行動を決定しタスクへと落とし込む思考の仕方についてです。

先ほど、ゴールから目標設定やタスクをかんがえ行動することが得意な方には手を挙げていただきましたが、全体の3割程度でしたでしょうか?」

すると、手を挙げられなかった方々が少しギクッとしたように肩をすくめられる方も見受けられます。
私は、その方々を確認しながら、話を続けました。

「実は、日本の方は他国の方に比べ、ゴールから行動を考える思考を苦手とする方が多いということをご存知でしょうか?まさに全体の8割ぐらいの方が、
step by step 型という目の前のことを一歩一歩こなしていくことを得意とする思考をお持ちでいらっしゃいます。まずは、なぜそのような思考の方が多いのか?ということからお話して参りましょう」

皆さんと呼吸を合わせるように皆さんの考えに想いを巡らせながら、皆さんにも考えていただく時間を作りました

「これには理由があります。皆さん なんでだと思います?ぜひお隣の方と考えてみてください」

この時間はアイスブレイクのような時間で、思い思いに冗談を交えながら談笑されておられます。私はセミナールームを周りながらそっとそのお話に耳を傾け、様々な意見を興味深く聴いておりました。

・日本は四季折々の楽しみ方があるのでつい・・・(笑)

・日本人は優しい人が多いので、自分にも人にも優しすぎて・・・

などなど(笑)

3分ほどたったところで私はベルを鳴らし講義を再開しました。

「はい!そこまでに致しましょう!皆さん楽しそうにお話されておられましたねぇ。

実はこれには明確な答えはありません。皆さんのお考えはそのまま正解と言えるかもしれませんね。私の方からも一説をご紹介させてください。」

徐々にホワイトボードに注目が集まるのを見計らい、私は話を進めました。

「突然ですが、皆さんに質問です。」

私はホワイトボードに大きく

10+2=

と書き、

「どなたかこちらの答えを教えていただけますか?」

と自ら、大きく手を挙げるしぐさをとりながらセミナールーム全体を見渡しました。

すると、何を言ってるんだこの人は?という怪訝な顔をしながら、一番奥の席に座りこちらを伺っているAクラスでは唯一の20代後半の伊藤さんが小さな声で、

「12」

とぶっきらぼうに応えてくれました。

それを受けて私が、

「伊藤さん ありがとうございます!誰からも声が上がらないと凹みますから、助かりました。ありがとうございます!本当助かります!」

というと、受講者の中から失笑が少し聴こえてきました。Aクラスは皆さん静かに聞いてくださるクラスですからこんなもんだろうと自分を納得させつつ、次の質問をします。

「ちなみにですが、自分は計算の結果12以外になりましたという方はいらっしゃいますか?おられましたら、ここで手を挙げていただけますか?」

皆さんがニヤッと笑ったのを確認し、私も少しいたずらっ子のようにニヤッと笑い、話を続けました。

「もしいらっしゃったら、遠慮せずに仰ってくださいね。

私の知り合いで、いたずらっ子でも確実に成績を上げる腕の良い”くもんの先生”がいらっしゃいますのでご紹介します」

そういうと、さっきより笑いの連鎖が大きくなりセミナールームが一体になっていくの感じました。

「さて、この答が満場一致で12で良いということで、話を進めて参ろうと思います」

そう言いながら私は大きく10+2=の先に12と書き加えました。

そして逆に=と12だけを残し、10と+と2を消し、その代わりにを3つ書ききれた

□ □ □ = 12

静かにセミナールームへ振り返り手を挙げるしぐさとともにこのように伝えました。

「さて、次の問題ですが、このに数字と+-×÷を書き加えるとしたら、皆さん何を入れますか?ちょっとお隣の方と出来るだけ多く出してみましょう」

すると沢山の回答が飛び交っています。

・1×12

・36÷3

・15-3

などなど・・・思い思いに沢山の言葉が出てきています。

2分ほどたったところで、
「はい!そこまでにいたしましょう!とても楽しそうですのでお隣の方とこのまま2時間お話していただいてもいいかなぁと思ったのですが、そうすると私が社長に怒られますから、この辺にいたしましょう」

そう伝え皆さんに、いくつか出た案を上げていただきました。

「いくらでも答えは出てきますよね。先ほどは満場一致で答えは一つでしたが、今回は違いますね。

実は皆さんが小学校の時に教わった算数は前者の2+10=という算数が多かったのですが、海外は後者の算数が多いようです。つまり、この教育の違いにより日本人はゴールから考える視点というのが他国の方より苦手であるという説があるようです。

しかし、皆さんが挙げてくださった日本人がゴールから考える視点が苦手なのはなぜか?の答えで上げてくださったのは、はどれも一理あるかと思います。」

一様になるほどぉという顔をなさる皆さんと一人一人目を合わせ、話を進めました。

「さて、しかし私は皆さんに伝えたいことがあります。それは、私が日本人がゴールから考える視点が苦手な理由は何故だと思いますか?とお伝えしたことに対して、皆さんがやや言い訳のような答えが多かったのが気になりました。

最初にお伝えした通り、ゴールや目標を設定することだけが未来を成功に導くとも限らないんです。ですので自分は目標の設定が苦手だなぁと思った方も全然平気です。

まずは、自分が step by step型の思考なのか?それともゴール逆算型思考なのか?それを確認するチェックシートをお出ししますので、そこからスタートしましょう」

そう伝え、あらかじめ印刷しておいた紙を前から配りました。

さて、だいぶお話が長くなってしまいましたので、このお話の続きは次回にいたしましょう

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