対話によりご本人から解決の糸口を引出すことが出来るのか?それとも嫌悪感を抱かせてしまうのか?これはせっかくの会話の時間で大きな結果の違いが生まれてしまいます。
そこで今日はコーチは何故対話を通じ解決の糸口を引き出すことが出来るのか?今日はそんなお話をしたいと思います。
何故このお話をしようと思ったのかということですが、それは前回・前々回のブログの話の流れから来ています。
要約をいかに載せておきます。
No.1 2020.07.01
このお話の主人公は鈴木課長という、外部企業でキャリアを積んだ転職組として期待のマネージャーです。
私と鈴木課長との出会いは、私が鈴木課長の会社で登壇していたとあるセミナーからでした。
そちらの会社は研究者や技術者を多く抱える医薬品メーカーさんでした。鈴木課長も生粋の研究肌リーダーという感じの論理的であり、マネジメントより研究をしていたいというような思考の持ち主でおられます。
私は2週に一度そちらの会社にお邪魔し、1回3時間程度の講義を年間24回というスケジュールで行っておりました。
鈴木課長は初回の講義の後、全員が帰られ誰もいなくなったセミナールームにこっそりいらして、ご自身のお悩みをお話いただいたのが初めての出会いです。
その時はマネジメント職への不満やチームメンバーとの軋轢に悩んでいらっしゃるということを、小一時間お話していただきましたが、最後には、ぜひメンバーの話をしっかりと聴いてみたいと仰って元気に帰って行かれました。
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詳しくは7月1日 ブログをお読みくださいませ
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No.2 2020.07.03
その後、2週間後に同じ内容を講義するBクラスの開催の為に、再びそちらの企業へお邪魔しました。その際にたまたま参加されておられたのが、鈴木課長の部下でおられる佐藤さんです。
佐藤さんは、講義後に、鈴木課長が最近 夢やビジョン、仕事に対する想いなどを根掘り葉掘り聞いてきて、チームメンバーも困っているというお話を伺いました。詳しくは7月3日のブログをご覧ください
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詳しくは7月3日 ブログをお読みくださいませ
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一部 佐藤さんご本人の言葉を掲載しておきますのでご覧ください↓
「実はうちの課長が最近一人づつ会議室に呼び出して、根掘り葉掘りと聞くんですよ。今抱えている仕事の課題や、今後のビジョンとかなんとかを・・・。
これがあまり評判が良くないんです。突然 会議室に呼び出されて変な話を始めたと噂になっていまして。ただでさえ忙しいのに 何を始めてくれちゃってんだと・・・。思いました・・・」
これが佐藤さんの言い分でした。しかしゆっくりとお話をお伺いし、こんがらがってしまった糸をほぐしていくと、最後にはこう仰っていらっしゃいました。
「課長の研究についての知見は深く、本当に勉強になることばかりでもっと聞かせてほしいなぁと思っているのも事実です。だから一人で業務を抱えるのではなく、仕事を部下に上手に振っていただき、オーバーワークになりすぎずにもう少しみんなを見てくれたら嬉しいなぁと思っています。
本当はみんな課長から学ぶことは多いと思うんですだから自分はそんな課長とみんなの通訳の係を引き受けたいなぁと思っています。」
そうお話されてまずはランチに課長をお誘いし、距離を縮めたいという約束をして帰って行かれました。
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私も鈴木課長も【傾聴】という技術を活用し相手の本音を知りたいと思ったわけです。
しかし対話によりご本人から解決の糸口を引出すことが出来た結果と、それとも嫌悪感を抱かせてしまった結果とで、大きな違いが生まれてしまいました。
そこで、私が佐藤さんと行った対話のコツを一つ一つ検証し、この会でお話しようと思います。
皆さんの組織にとって、何かのお役に立つことがありましたらこの上なく幸せです。それでは、一つ一つ丁寧に説明を心掛けたいと思います。長くなりますがお付き合いいただけましたら幸いです。
私は佐藤さんとの会話の流れの中でいくつかの魔法をかけております。第2話には魔法をかけたポイントを赤字にしておきましたので、合わせてご確認いただきますようお願い致します。
【傾聴に重要なポイント】
Point1 アウェイに呼び出さない
①お好きな椅子を一つお持ちになって、どこでも構いませんのでお座りになってお待ちいただけますか?
私はこのように佐藤さんにお伝えしました。これは、
私が席を指示するのではなく、こちらに来ていただくのでもなく佐藤さんの話やすい場所を選んでいただくためにこのようにお伝えしたのです。
人は、アウェイな場所に呼び出されるとそれだけで緊張し本音を隠します。従って、相手の本音を聴きたいと思うのであれば、相手が安心してお話していただける環境に自分が出向くのがベストです。会社でよくあるパターンとして、上司が部下を自分のデスク周りに呼び出すことがありますが、歩いている一歩一歩で緊張を高めて上司の所に向かっていると思っても過言ではありません。
鈴木課長のように会議室でお話する必要がある場合には、先に部下の方を通して、自分が後から入り、好きな席を選んでいただく方がベストかもしれません。
とにもかくにも、相手がリラックスできる環境を整えてあげることに最大限の気を使ってあげる事からが傾聴のスタートです
Point2 パーソナルスペースの確保
②佐藤さんが話やすい位置に椅子を置きたいと思うのですが、どこが良いですか?
私は、自分の椅子を持っていき、佐藤さんに私が座る位置を選んでいただきました。
これは、佐藤さんのパーソナルスペースの確保をも目的にしています。
パーソナルスペース(Peasonal space)とは、他者が自分に近づくことを許せる限界の範囲、つまり心理的な縄張りのことです。
このパーソナルスペースとは男女によっても違いますが、関係性が大きく影響を及ぼします。例えば、自分のご家族では体が密着するような近さでも気にもなりませんが、会社の人がそんな近くにいたら非常に気持ちが悪いですよね。
今の自分と相手の心の距離を相手に判断して席を決めてもらうことで、相手に会話の主導権をお渡しすることが出来ます。
Point3 態度は体で表す
③私は心持ち状態を前に倒し・・・
これは、佐藤さんのお話をしっかりと聴かせてくださいという態度を体で表したものです。よく目にする会社の会議で、背もたれに尾骨から背骨の全部をつけて、手と首だけ前に出した状態でパソコン画面を眺めながら話を聞いている方はいらっしゃいませんか?あるいは全員そうだという会社さんもおられるかもしれません。
これでは発言者はやる気が出ませんよね。適当な報告をしてやり過ごそうと思うのが関の山です。傾聴で大切なことは相手がしっかりと自分の話を聴いてくれているという感覚です。従って、状態はしっかりとたてて、気持ち前傾ぐらいがちょうど良いのです。実は他にも沢山のアクションがあるのですが、それは追々お話していくとして、「態度は体で表す」ぜひ試していただきたいポイントです。
Point4 安心安全の場の確保
④セミナールームには誰もいませんし、これだけ扉から遠ければ声も聞こえないでしょう。
ましてや私は誰にもお伝えしませんので、安心してください。
これは、「安心安全の場の確保」という作業です。ここでお話した内容は誰にも口外しないので安心して下さいと伝えることで改めて自由に話して良いのだという気持ちが生まれる効果があります。
Point5 自己開示
⑤誰だってもちろん私だってそう思うことはありますので、佐藤さんのお気持ちよく理解できます。
これは、聴き手側(コーチ)が自分の弱みや失敗を、話し手側にあえてお話することで、なんだ、寺田さんもそうなら自分の思っている悪口も安心して話してもOKだと思っていただく効果があります。
また、これにより、先ほどの「安心安全の場」は更に強化されます。
この場所では何を話しても否定も非難もされることはない。全て正解だし、受け入れられるという気持ちが持てることで初めて自分の本音を話すことが出来るようになります。
Point6 自分の意見を言う際は相手の了解を得る
⑥佐藤さん、私がお話をお伺いしていて感じたことをお話しても良いですか?
私は、この時間はあくまで話し手側の時間であると自分自身が認識し話を聴くというマインドセットを忘れないためにもこのように聴いています。また主観や固定観念を押し付けてしまわないように注意する意識にも繋がります。
そして話し手側にもそのように意識してもらえるように、話を挟む時は、了解を得ましょう
Point7 相手と自分の思考を合わせる
⑦佐藤さんが私にお声がけいただいた本当の理由は、・・・・これで合っていますか?
自分が勝手に相手の思考を理解した気になりアドバイスをしたりしてしまう場合ってありませんか?これを避けるためにも、話の本質に達してきた時点で一度自分が感じたことを相手に話し、確認を取る作業が必要です。これにより本当に話したい内容を話せる時間に使っていただくことができます。
闇雲に時間が過ぎ、本当はこの話をしたかったんじゃないんだよねぇと言われたときのショックと言ったらないです。ちなみに私にはそういう経験が何度もあります・・・(*^-^*)
Point8 本質に達したと思った時点でアドバイスしない
⑧それではもう少しお話続けていただけますか?
話している方が話の本質に達した時点で、「あぁそれならこうしたら良いよ」とアドバイスをしたくなってしまう気持ちは、一度グッと抑えましょう。経験値の高い上司の方や年上の方こそつい良かれと思ってやってしまいがちなのですが、もう一段深い話を聴きとるためにもここはグッと我慢しましょう
Point9 相手の心と共鳴する
⑨同じベンチに座り同じ景色を見ているような感覚を感じながらそっと息遣いを合わせました
ここには二つの効果が入っています。
一つ目はビジュアライゼーションです。同じベンチの隣で同じ景色を見ているように相手の心のイメージと焦点を合わせていく作業を言います。人は十人十色です。考え方、生き方、環境など全てが違います。従って自分の視点で物事を判断し正しい正しくないと評価してしまうことにより、相手が心を閉ざしてしまったとしたら突然話を辞めてしまうことになります。コーチングの最も重要なポイントは沢山話をしてもらうことで、口から出た言葉が耳に入り、客観や俯瞰をしながらご自身で課題の解決へ導くことです。従って、お話をしていただけない状況が起こったのであればそれは、命とりです。とはいうものの、私も沢山の失敗経験を繰り返したことを今でも苦い思い出としていくつも持っています(*^-^*)
二つ目はペイシングです。これは相手と心のチャンネルを合わせていくために行う息遣いです。相手の話のペースや肩の息遣いを見ながら相手と自分の呼吸の速度やタイミングをそっと合わせていく作業です。
これにより相手はより安心して話やすい環境を作ることが出来ます
Point10 言葉にならない声を聴く
⑩かれこれ30分ほど佐藤さんはお話した後、ふうぅっと長い息を吐きながら・・・
これは相手の心の中に溜まっていた不満が吐き出され思考が転換した瞬間の合図です。人は、言葉にならない声を沢山の体で表しています。例えば、頭をかくしぐさ、身振り手振りが大きくなる時、ため息一つとっても「はぁ!!」と強く早く吐く時と 「はぁ~」と弱く吐く時では怒りと喜びほどの違いがありますよね。そのサインを見逃すことなく話の展開の変化を感じ取ることが出来たとしたら、言葉に頼らないコミュニケーションへとジャンプアップすることが出来ます。人は言葉で嘘をつく生き物です。これは私も含めてそうです。従って相手の真意を見落とすことがないようにしたいものですね
Point11 プラスの意識に転換する質問
⑫本当だったらチームがどんな状態だったら気持ちよく仕事が出来そうですか?
傾聴のゴールはカウンセラーさんとコーチではまた違うのですが、コーチングの場合には、プラスの未来を描ける行動が決定するところにゴール設定をすると傾聴時間をデザインしやすくなります。
そのためには、まず心の中にある不満や不安などなどの諸々の感情を全て吐き出していただく必要があるのですが、ずっとマイナスの意識で終わっていただいては相手にとっても良い時間と言えないのではないでしょうか?そこで、私がしたことは、ポイント10で話の転換期を迎えていることを察知した後に、
「本当だったらどうなっていたい?」という質問をしました。
この質問の答えにマイナスの答えが出る可能性は非常に少ないです。従って、未来のプラスの答えを引き出しやすいという特徴があります。
ここで、マイナスな未来が出てきた場合にはその感情を一旦受け入れて戦略を練り直しましょう。まだ信頼関係が出来ていない可能性もありますので、強情な奴め!!などと思わず、改めて同じ景色を同じベンチに座って眺めることが出来ているのか?自分の心に問い直してみてください
Point12 視線の動きに注意
⑫佐藤さんはゆっくりと左上に視線を動かしながら・・・
人の視線の動きは脳の反応と結びついています。従って考えていることにより視線が動きます。目は口ほどにものを言うというのはこの言葉から来ているのかもしれません。心理学用語ではアイ・パターンという言葉で表されますが、この中で左上に視線が向いている時は未来の、まだたどり着いたことのないイメージを思い出している可能性があるとのことです。このアイ・パターンについてはまた、どこかのタイミングでお話をしたいと思うのですが、目は口ほどにものを言うということはぜひ覚えておいていただき、相手の目の動きを見逃さずに会話を進めていただけたらと思います。
Point13 7秒の沈黙ルール
⑬佐藤さんは7秒ほどの沈黙を経て、ゆっくりと話し始めました
佐藤さんは左上に視線を動かしながらしばらくの間沈黙されておられました。その沈黙の時間は7秒ほどです。私はこの7秒間をとても大切にしています。何かを考えている時に人は沈黙しますが、つい沈黙が怖くて次の質問をしてしまったり、自分の経験や見解を伝えてしまったことはありませんか?
沈黙はシンキングタイムです。ここに割って入らないことがとても大切です。とくに話し手側にとってじっくり考えたい場面はより沈黙は長くなります。
私の場合はゆっくりと7つ数えて(ということは7秒以上ですね(笑))、それでも迷っているときは改めて次のように訊ねます。
「答えは今、見つかりそうにありませんか?」「質問を変えたほうが良いですか?」などです。
Point14 背中を押す
⑭それはとても良いことですね。佐藤さんでしたら、一番課長と長くお付き合いしているということでしたし、
他のメンバーの方との調整係としての力を発揮しそうですね
相手の考えに同意すると共に、そっと背中を押す言葉を伝えます。この際に注意する点は、相手のお話から見つけた、根拠を一緒に添えて差し上げることです。
闇雲に「○○さんなら大丈夫大丈夫!」と言われるより、説得力が増しますし、あなただからこそきっと出来ると伝える事ができます。
Point15 具体的な行動に落とし込む
⑮具体的にもう既に思いついている行動って何かありますか?
せっかくのお話は、直ぐに忘れてしまいます。行動が起きなければ何の意味もありません。「今日のお話良かったね」で終わらないためにも、小さな行動のコミットを自然にしていただけるように促していきます。
Point16 次回報告の約束をする
⑯いいですね!ぜひまたご報告してください
次回またコーチに報告することが楽しみになっていただけるように、小さな約束を取り交わして終わりにしていきます。
これにより、「寺田さんに報告しないといけないし・・・」という一種の強制力が働きます。決めた行動をやってみようという気持ちになっていただけたら幸いだなぁと思っています。
人が変わるポイントは行動を起こす時です。私が思うコーチングの最終ゴールはその方とその方を取り巻く人々の人生が好転することです。従って、少しでも行動を起こしすぞという気持ちになっていただけることがとても重要だと思っています。
Point17 シームレスであることそして・・・
そして最後となりましたが、会話を通じて全ての共通点について二つほどお話します。
まずは一つ目はシームレスであること。シームレスとは、縫い目がないという意味です。一連の【傾聴】スキルを普通の会話の中で、空気が流れるように、行うことが出来る状態をシームレスと言います。この域に達するには沢山の方の話を聴く時間を持つこと以外にはないのかもしれません。
そして・・・二つ目はこの沢山のお話を聴かせていただく自分とは?ということですが、
これを実現する為に最も必要な心構えは、
恐らく相手の話に興味を持ち耳を傾けるということなのだと思います。
つまり聴き手側の人間性を高め続ける事が話し手側の安心感につながるのではないかと考えています。
最後の項目を含め私も日々修行の身です。何度も失敗と検証を繰り返しながら皆さんと共に成長していけたらと思っております。
これらの知識や心構えが皆さんの組織の成長に少しでもお役に立つことがあれば幸いです。
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さて、次回はとうとうAクラスに所属の鈴木課長が講義に参加してくださいます。どんなお話をしてくださるか、とても楽しみですね。
鈴木課長が皆さんと共に成長しながらチームを活性化していく未来が私にはもう見えているのですが、
皆さんはどうでしょうか?またお会い出来ますことを楽しみにしております
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